怖いもの知らず

外国語、外国人と異文化体験・ビジネス・身辺雑記

王 理(オウ リー)ー それが中国のやり方よ

  • 中国人エリート(王 理)

  • 王 理(オウ リー)は28歳。中国江蘇省蘇州出身。国立大学院生で物質化学専攻のエリート。帰国する講師(彼も大学院生だったが)の紹介でオフィスに現れた時から、すらっとした長身、短くカットした髪形と知的な顔立ち、丁寧で腰が低く、敬語を使い分ける巧みな日本語で、事務局長をはじめ、おじ様方の心をわしづかみ。頭がよく、クールな理系男子で、いかにも「優秀な中国人エリート」を思わせた。

●中国人は根回し上手

理(リー)は、4月から始まった中国語4クラスを卒なくこなした。特に受講生の年齢層が高い、中級から上のクラスでは人気で、10月からの後期授業も全員継続。10人定員のクラスは満杯となっていた。後期授業も順調に滑り出した11月、理(リー)から「月曜のクラスは人数が多いし、微妙にレベルにずれがある。1月から月曜の夜は、2コマに分けて授業がしたい」と申し入れがあった。確かに固まる傾向のある中国語のクラスはレベルに差が出てくることは事実だが、月曜の夜、1時間のクラスにのためにスクールにやってくるのは効率が悪い。後の時間に1時間授業が出来れば講師料も2倍。月曜のクラスに空き教室があることを知っての計算づくの申し出に思え、ちょっとカチンときた。固まったクラスを期間途中で分けることは経験上難しいこと、1月は冬場の北陸は雪が降って足場が悪く、出席率が落ちることを理由に、来年4月からの新学期にクラス増設を考えるとうことで申し出を断った。理(リー)はあっさり引き下がったが、その1週間後「クラスの受講生に話したら、うまく2つに分けれそうだ」と再度の申し出。勝手に受講生と話をつけるやり方に、またまたカチン。冬場の低出席率を理由にクラス増設を再度拒否。静かに、しかししつこくクラスをコントロールしようとするやり方に気分を害したが、この時点でまだまだ、さらに次のプッシュが来ることを察知すべきだったのだ。

理(リー)は、あえて中国人は、と言わせてもらうが、頭がよく、静かで、しかししつこく、Never Give Up. 裏に回って工作を始めた。12月に入って、北陸はみぞれが降りだし、そろそろ来年度のクラス編成を考えねばならない頃、事務局長から御呼出しが。「月曜の中国語の受講生から、人数が多いしレベルの差もあるので、2つにわけてくれと申し出があった。確かに10人定員いっぱいだし、教室もあいているなら、2クラスに設定したらどうか」受講生を使っての揺さぶり工作に怒りが湧き上がる。1月に入ると出席率が下がることを訴えてみたが、理(リー)は、受講生の中でも市役所職員や会社の社長さん等を動かしたらしく、事務局長は軽く言ってのけた。「まあ、講師も熱心に2クラスにしたいと言ってきているから、いいんじゃないの」12月最後の授業の夜、理(リー)は、2つに分けたクラスの名簿を残し、さわやかに帰って行った。

●根回し逆転 

新年を迎え、1~3月最終期の授業が始まる。北陸の冬は陰々と暗く、びちゃびちゃとみぞれ混じりの雪が降る。お年の受講生は、たいてい3か月冬眠休講。吹雪の夜は明るいクラスで受講生を待つ講師ただ1人、ということも珍しくない。案の定、月曜の夜ののクラスは、教室で1人本を読みながら受講生を待っている理(リー)の姿が続いた。たとえ授業をしなくても講師料は入る。これも計算済みかとまた腹が立つ。時々教室をのぞいて「ほれ、みたことか」と冷たい視線を向けてやった。

外国語の講師は、常勤も非常勤も1年毎の契約で、契約を打ち切る場合は、1か月前に通知することになっている。打ち切りの理由を特に告げる必要はない。しかし実際は1月くらいから口頭で確認を取り、4月の新学期のカリキュラムやクラス編成を相談する。1月末には新学期のパンフレットの元原稿ができていないといけないからだ。中国人はしつこいが、私だって執念深いんだ!裏で手をまわして工作する理(リー)のやり方に頭に来ていた私は、3月初め文書で新学期の契約更新はないと通告した。

パニックになった理(リー)の取った行動はすごかった。まず事務局長に朝な夕な電話ぜめ。新学期も続けたいと切々と訴える。事務局長が何とかしてくれと根を上げた。「他に良い講師がいましたので。」と知らん顔。次にどこで番号を調べたのか、私の自宅に毎晩電話がかかってきた。最後に彼が言った言葉が私の脳裏に深く残っている。「私はミスをしました。誰が本当のボスなのか、誰がスクールを支切っているのか読み間違えました。」間違えたのはそこなのかよ!確かに日本でも営業員は「決定権のない人にいくら売りこんでもなかなか決まらない」という。しかし日本人なら、たとえ通らなくても一応筋は通すだろう。中国人の通らないと分ったら、サッサと乗り換え、裏で知っている限りの手口で工作をするやり方。中国との商談は難しいと聞いていたが、彼らのやり方を思い知らされた。 その後、理(リー)は受講生を動かし、嘆願書を出させようとしたが、中国語の受講生には市や企業から研修に来ている人が多かったこと、加えて「そこまでしなくても」というゆるい日本人の体質のせいで、2~3回集まったがお茶を飲んでお仕舞い。嘆願書はうやむやになったようだ。理(リー)よ。読み間違えたのは本当のボスは誰かということではなく、日本人の体質を知らなかったことじゃない? 

●中国人からのプレゼント

話は変わるが、中国人は、根回し大好きな特質のせいか、やたらとプレゼントをしたがる。他の国の講師も、休暇や帰国で海外に出た時は、チョコレートやクッキーなんかをお土産に買ってきてくれるが、中国人は重要人物と判断した人には、お菓子のような食べて無くなる物ではなくて、後にのこる物をプレゼントする。ビザの取得に必要な書類や推薦状を出してあげたりしたので、石の文鎮とか竹とパンダの水墨画など、高いのか安いのか、うまいのかへたなのか、よくわからない物がうちの押入れにある。

中国人から後に残る物、捨てない限りいつまでも手元に残る物をもらったら、あなたは、その中国人の中ではビップ扱いと思って間違いない。

 

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