怖いもの知らず

外国語、外国人と異文化体験・ビジネス・身辺雑記

Steve ー No.と言えないアメリカ人

Noと言えない愛しのSteve

「夏休みで何も授業がなくて暇な時もあるんだから、1日や2日 イヴェントで日曜日にサービス出勤したっていいじゃないか」 「ビジネスマン対象に土曜日も授業をやろう」等、突然思いつきで言い出すトップ。契約の中で働いている外国人達にしてみれば、そえはそれ、これはこれ。日本人にしか通用しない理屈を平気で通そうとするトップは本当に困る。

「トップの命令で土曜日にも授業することになったから、誰かやってよ。休みは日・月になるけど。」

3人いる専任講師に頼んで見ると、案の定「土曜日はバスケの練習があるから」とか何とか、サッサと断られ、いつものように貧乏くじを引くのは  Steveだ。

Steveは、California, San Diego 出身の42歳。180cmを超す大男。ちょっとラテン系が入っていて、顔のパーツがすべて大きすぎるのが難点だが、まあまあハンサムの部類。ジャケットにノーネクタイで、代わりに同系色のスカーフをしていたり、うすいピンクのストライプのシャツを着ていたり、すてきなオリーブグリーンのマフラーをまいていたりする。色彩感覚は抜群でおしゃれ! Steveは、いつも低い声でやさしいしゃべり方をする。ハンサムだし、やさしいので昼のおば様方のクラスでは大人気。しかも絶対安全!だってゲイだもん。

しかし、この大男が何か頼まれると絶対「No. 」と言えない。土曜出勤も頼むと結局引き受けてくれた。ところが、いつものように後になって、必ずグズグズ言い出す。「友達が月曜は休みじゃないから、月曜が休みでも どったらこったら・・・・」

「最初から分かってる話でしょ。後からいやと言われるとなお迷惑なの。No.ならNo.と最初から言え!」きつい調子で何度怒ったか。「お前は日本人みたいな奴じゃ。」こんなことを言われるアメリカ人って・・・・。

 菜食主義と美意識の高いゲイ

私の知っている来日したアメリカ人の中でゲイの人の確率はかなり高く、さらにそのゲイの人たちのなかで菜食主義者の確率も、またかなり高い様に思う。Steveもバリバリのゲイで、バリバリの菜食主義者。昼に野菜サンドイッチなどを優雅につまんでいる180cmのSteveをみると、「野菜だけでこれだけのガタイを維持していけるのか」と疑問に思う。まあゴリラもあんなにでっかくても草食動物だしなあ。良い、悪いを抜きにして私の知っているゲイたちは、みんなやさしい。他人の気持ちを思いやるのに敏感だし、強く自分を押しだすことができない。女性からみたら、気持ちを分かってもらえる心やさしい異性(?!)の友達で、無論セクハラ等には無縁で、異性として気を使うこともなく、私もゲイの知り合いは何人かいるが、みんな好きだ。それになぜか美的センスにすぐれた人が多い。タレントやアーティストとして活躍するゲイの人が多いのはうなずける。心やさしいゲイ達にとって「おれが、おれが」という自己主張の国、アメリカはきっと生きづらいにちがいない。だから東洋の、自己主張のない、ぬるま湯の世界を求めてやって来るのだと思う。ただ日本はゲイメッカと呼ばれるタイやインドネシアに比べると、まだまだ偏見が強く、つまり異物を排除するStone Headが多いのでイヤな思いをすることもあるかと思う。「No.と言えない。押しが弱い」「優柔不断」なところは、まさに日本人とぴったり重なると思うのだが・・・。

 Steveは今どうしているかな

Steveは、その後美術系の専門学校に転職してスクールを辞めた。いつも、あまりに煮え切らない態度についつい、問い詰め、説教していた。

「だからどうなのよ?サッサと返事頂戴!」「そういうことは、はっきりさせないとダメなのよ」

他の講師からは言われていた。「あんたはSteveのママか」

でっかい体して、ぐずぐずしているSteveを見ていると、ついイライラして、ちょっとやりすぎだったかも・・・・。 

それから3年ほどして、町の住宅街の交差点でマウンテンバイクに乗ったSteveを見かけた。もう充分に中年のはずだが、黄色いポロシャツに砂色のチノパン、サングラスと、以前と変わらずおしゃれ。信号が変わって、交差点を突き切るSteveの後を、4~5mほど離れて、痩せた東洋系の若い男の子が追いかけて行った。その白いシャツの後ろ姿が、さわやかで眩しかった。

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