怖いもの知らず

外国語、外国人と異文化体験・ビジネス・身辺雑記

Amira -アラブの箱入り妻

アラブの美人妻

そばかすが浮いた白い顔、ふわふわの金髪、薄い茶色の瞳が不安気に動く。

何とAmira(アミーラ)は、就職面接にご主人を連れてきた。 

Amiraは29歳、スイス ローザンヌ生まれと履歴書には書いてあるが

大学及び職歴はアフリカのチュニジアになっている。

Native Languageがフランス語、アラビア語で非常勤講師としての応募だった。

地方都市では英語、中国語、韓国語以外の外国語のNative Speakerは少なく、

さらに教えられるレベルとなるとなかなか見つけられないので、Amiraのフランスご講師としての応募は大歓迎。

外国語の教えられるレベルとは・・

日本語が母国語だといっても、すべての日本人が日本語を教えられるかといことはできないように、フランス語ができると当人はいっても、教えられるレベルかどうか怪しいことが多い。とくにラテン語を基とする欧米語(イタリア語、スペイン語ポルトガル語、フランス語等)は文法的にはほとんど同じで、単語も発音が違うだけで同じということが多い。なので1カ国語話せれば、他の言語も「理解できる」。ただ当方が求めるのは語学講師なので「理解できる」レベルでは話にならない。しかし英語以外の言語のレベルチェックは難しい。英語以外の外国語講師は英語で面接することになるが、なまりは別として英語も話せるということは語学運用能力が高いだろうということで、レベルを推し量ることになる。いづれにしても当人のキャラクターを見る意味においても面接は重要で、時間をかける。

アラブ人の旦那はえらそう??

年齢も10歳は年上にみえる、でっぷり肥って口髭をたくわえた、えらそうな態度のご主人と、その後ろに隠れるような、細い、儚げな感じのAmiraをオフィスに招き入れる。

持参した履歴書をみながら、まずは軽い質問をしてみる。

「日本に来てどのくらい?」「日本はどんな印象?」「大学での専攻は何?」

質問のすべてに、付添のご主人が訛りの強い英語で答える。Amiraはおどおど微笑むばかり。さすがに頭にきた。

「私はAmiraに聞いているの。講師希望はあなたじゃないでしょ」

ご主人は腕組みしたまま、偉そうに答える。

「私はAmiraのすべてを理解している。私もフランス語は堪能だから、Amiraの都合が悪い時は、私が教えることができる」

(あんたからは教わりたくないよ)と心の中で毒づいたが、採用後、何度か本当に

「今日はAmiraの都合が悪いから」

と、当人が現れることがあった。当日の時間ぎりぎりになって現れ

「ちゃんとAmiraから授業予定を聞いているから大丈夫」

と言われれば回避しようがない、確信犯。 

「時給はいくらなんだ? 家は遠いが交通費はどうなっている?」

腕組みしたまま、重ねて聞いてくる。

(だからAmiraに頼んでいるんだってば!お前じゃないよ)もう反感のかたまり!

講師料振込は本人名義の口座でなければならない決まりなので、ここぞとばかりに

念を押す。「Amira名義の口座がないなら作ってください」

不満そうだったが、しぶしぶ承諾したので、少し溜飲が下がった。

結局Amiraはほとんどしゃべらず。

 

Amiraは週1回金曜の夜に2時間、フランス語上級者のクラスを担当することになった。弱々しく内気な印象のAmiraが、講師としてちゃんとやれるか心配していたが、ご主人とはなれてクラスに入るとなかなか快活で、受講生の笑い声が聞こえたりして、心配は杞憂に終わった。ところがAmiraを送り迎えするために、ご主人も付いてくる。当初はAmiraの授業中でも教室に入り込んで授業を監視(!?)しているので、受講生もやりにくいだろうと思い、授業中はクラスの外に出るよう言うと、文句を言いながらも従ってくれた。しかし今度はその待ち時間にオフィスに入ってきて、他の講師の椅子にドッカと腰をおろし、机に靴をはいたままの足を放り上げる。勝手にそのあたりの新聞や雑誌を広げ、頂き物のお菓子があると、断りもなく口に放り込む。コーヒーを飲む・・。嫌なことははっきり言うとおもっていたアメリカ人でも、堂々とやられると正面切っては「そこをどいてくれ。その足はなんだ。」と言えないらしいのが可笑しい。そのくせ蔭ではさんざん悪口を言っている。

アラブ箱入り妻の本性

 Amiraは大学院の博士課程で研究するご主人の在日期間に合わせて約2年間、フランス語講座を担当していたが、いつもご主人同伴出社だった。外国人は日本人に比べて角国対する愛情をはっきり表す人が多い。まめに家に連絡したり、誕生日や記念日のイベントを一緒にすごしたり、職場で奥さんや子供の自慢話をしたり・・・

だがAmiraのご主人、アラブ人の妻への愛情表現は、他の外国人のそれとはちょっと違うように感じた。もっと束縛的で、自分の支配下において可愛がるという感じがする。

  (sheltring Sky) ベルトリッチ監督、音楽が坂本龍一)という映画をご存じだろうか。北アフリカの、ミステリアスで官能的な世界を描いた私の好きな映画の1つだが、この映画の世界とAmiraの弱々しい外見、ご主人の尊大な様子が結びつき、ずっと思っていた。

「えらそうなご主人にコントロールされている可哀そうなAmira. アラブの男は頑固な男尊女卑。えらそうで嫌な感じ」

Amiraが帰国してからしばらくたったある日、外国人講師仲間と飲みに行って、噂話をしていたらAmiraの話になった。皆の話を聞いていると私の抱いていた思いと全然違う事実を知った。Amiraはおとなしそうだが、本当はかなり気が強く、他の外国語教室で他の講師の講師料を調べ上げ、短期間であることを理由に、かなりの講師料を吹っ掛けたそうだ。また非常勤講師は休校時は無給が当たり前だが、これも有給になるよう持ちかけたという話で、皆の評判はさんざんだった。

「あのご主人の差し金じゃないの」

と聞いたら、本当はAmiraがご主人を尻に敷いていたというから、またびっくり!

「毎回の送り迎えだって、Amiraがやらせていたんだからね」

するとあの突然の授業代講も、Amiraの主導か! さらに口髭を蓄え、尊大なご主人より、Amiraの方がずっと年上だったとは?! 

人の外見と中身の違い!外国に対する勝手な思い込み。印象だけで決めつけてはいけないと反省。

 

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